2010.8.05 uodate  連載記事
構造家 坪井宏嗣氏へのインタビュー
(2010/8/4坪井氏事務所にて)

ヨコヲノ森ーー
この度は構造塾のレクチャーをお引き受けいただき、ありがとうございます。今回で2回目の開催になりますが、貴重なレクチャーになると思っています。

坪井ーー
自分自身、独立して4年になりますが、これまで雑多に仕事をこなしてきました。今回は自分がどのようなスタンスで建築に関わってきたのかを整理する、良い機会だと思っています。


ヨコヲノ森ーー
今日はご挨拶をかねた前談ですので、坪井さんのこれまでについて少しお話しを聞かせて頂ければと思います。
早速ですが、建築の道に、また構造の分野に進まれた経緯を教えてください。

坪井ーー
私は、父が建築家だったのですが殆ど別居していたので、むしろ影響を受けたのは母の書架にあったゴシック職人を題材にした小説でした。建築を学び始めた当初は、意匠に進むつもりで特別構造に興味があった訳ではありません。

学部時代は歴史系の研究室に所属していました。しかも都市系。東大にいると物理や数学の分野で明らかに自分とは次元の違う人達に出会ってしまうので、自分は理系じゃないのかな、と思っていました。
ただ将来の方向性を考えていく中で、歴史の分野は自分の適性とは何か違うなと感じていました。仕事とはプロフェッショナルであるべきだから、自分が最も得意とするもので勝負しなければいけない、それはなんだろうと。自分探しとでもいいますかね。

その結果、バリバリの理系の人達には到底叶わないけれども、自分の中では自信をもって判断を下す事のできる数学や物理を手掛かりに、大学院では構造の研究室へ進む事にしました。ただ、学部時代は構造力学をまじめに勉強するような学生ではなかったので、大学院に進む前に、構造事務所で構造図を作成するアルバイトをしました。アルバイトの後には、独学で構造の勉強も必死でやりました。


ヨコヲノ森ーー
その後、佐藤淳構造設計事務所へはどのような経緯で入所する事になったのですか?

坪井ーー
当初は、アトリエ事務所ではなく企業に就職するつもりでした。しかし、当時は就職氷河期と言われる時代で、浪人・留年もしていたので企業への就職は難しいものでした。

そんな時、研究室の先輩でもある佐藤さんが所員を募集しているという事を知り、訪ねて行ったところ、運良く拾ってもらえました。
当時、佐藤さんはまだあまり有名ではありませんでしたが、面識もありましたし、これからの事務所の可能性、自分のキャリアを積む場所としてはとても良い環境だと思い、入所させて頂く事にしました。


ヨコヲノ森ーー
坪井さんが感じている構造設計の楽しさとは何ですか?

坪井ーー
上棟時に自分の予想を超える緊張感のある空間ができた時は嬉しいですね。竣工時、更にそれを上回るものが出来ていると、それが一番嬉しいです。


ヨコヲノ森ーー
その緊張感とはどういうものですか?

坪井ーー
躯体そのものに対しての美意識はあまり強いほうではないので、視覚的なものではなく、体感的な意味での緊張感です。視覚的な部分は建築家に隅々までデザインして欲しいと思っています。単に部材が細ければ、緊張感のある空間ができるとは思っていません。


ヨコヲノ森ーー
そのお話は非常に興味があります。お話だけを聞く限りでは、あまりイメージできませんが、当日ご自身の作品を通してぜひとも詳しいお話をお聞かせください。
最後に、坪井さんからレクチャーにあたって何かご要望はありますか?

坪井ーー
あまり人前で話をする事に慣れていませんので、話の途中でもいろいろ質問をしてもらいたいですね。そうしてレクチャーが盛り上がってくれればいいと思います。


<終>



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